夕刻の廃材

戻りたい
ここでは無いどこかへ

行った事も無い工場が海沿いにあって
海からは僕の精神が溢れ出す
青空をにじませる煙
全て海から生まれた
僕の精神や
灰色の廃材さえも

いっその事止む事無き水を汲み上げて
胸の中に工場を産み付けるがいい
自動筆記機械
しかし僕は忘れてしまった
工場と海へと繋がる
細い茂みの道を
見つけたよしかし
岡崎京子の漫画は地図では無い
地面に文字を書き記す事ができないから
いつまでも僕の精神は宙に浮いたまま
故郷喪失者

今度は天空だけ交代して
煙は月をにじませた
工場のふもとのほこりっぽいバラック群に
赤提灯が次々と灯る
7:00-18:00の労働を終えた人々が
バラック群に点在する酒場で各々
いつも春であるかのように語り合う

貧しくも帰る場所がある人々と
どんなに肥えても帰る場所が無い僕達

戻りたい
ここでは無いどこかへ